国民健康保険?  特例退職者医療制度?  75歳まで

特例退職被保険者制度とは、

会社を退職した後に75歳まで加入することができる健康保険です。
従業員数700名以上もしくは同業種の会社を合計して3000名以上が組合員となることが必要になり、規模の大きな健康保険組合だけが運営している制度です。
利用できるのは全国で61組合ほどであり、これらの組合以外では任意継続被保険者の制度しかありません。  

 

通常、会社を退職した方は任意継続被保険者になるか、

国民健康保険に加入するかの2択になりますが、

この制度がある会社に長く勤めていた方は

後期高齢者医療制度が適用される75歳まで健康保険に加入し続けることができます。

一度加入すると、再就職をして新しい会社の健康保険に加入する以外には脱退することができません。

また逆に、

一度国民健康保険に加入し、老齢厚生年金を受給するとこの制度を利用することはできません。

退職の翌年以降の収入によって判断が異なってきますので、どちらがお得を考える必要があります。

どちらが得になる?保険料の算定方法

特例退職被保険者制度では、
健康保険組合に加入する従業員全体の平均標準報酬月額に、
標準賞与額の12分の1を足した金額の2分の1の範囲内が保険料になります。
 
この制度を利用するには退職までの加入期間が20年以上、
もしくは40歳以後に10年以上加入していることが必要になります。
 
通常、長く勤めると給料は上がっていきますので、
基本的に全額負担ではありますが、
現役時の給料から計算した額よりも低い保険料になるでしょう。  

 

一方、国民健康保険に加入する場合、

保険料は退職前の年収を基に計算されます。
そのため翌年に関しては保険料が倍以上になります。
しかし翌々年以降に関しては、

下がった収入額を基に再計算されますので保険料は大きく下がります。

退職後も継続して収入がある場合は、

特例退職被保険者制度を利用すると保険料の節約になります。
また、組合健保であることから保養所なども使用できるケースが多く、

様々なメリットがあります。

加入できなくなるパターンとは?

特例退職被保険者制度では、
退職後3カ月以内に手続きをすることで健康保険に加入することができます。
 
すぐに判断することができない場合、
2年間は任意継続被保険者になるか、
国民健康保険に加入することになります。
 
任意継続被保険者でも保険料は安くなりますので、
すぐに特例退職被保険者にならないデメリットはありません。  

 

ここで気を付けておきたいことは、

老齢厚生年金を受給し始める段階で国民健康保険に加入していると、

制度を利用できなくなることです。


老齢厚生年金は報酬比例部分のみでも受給していることになりますので、

65歳が受給開始年齢になるわけではありません。


そのため、退職の翌々年以降の保険料を安くするために国保に入るときは

受給開始前に切り替える必要があります。

通常、退職後すぐに報酬比例部分を受給するため、

実質的には国保加入の選択肢を取るケースは

年金受給の繰り下げを行う場合に限られます。

一般的にはすぐ特例退職被保険者になるのがオススメ

健保組合による健康保険には、
国保には無いメリットがあります。
 
保険給付については国保と同じですが、
先に述べた保養所の使用以外にも、
組合員価格での医薬品の購入や
健康診断のサービスが受けられます。
 
健保組合の財務状態という観点からも、
特例退職被保険者制度を利用する方が有利です。  

 

厚生年金についても、

報酬比例部分だけでは金額がまだ少なく、

繰り下げ受給によるメリットは大きいものではありません。


そのため、一般的には特例退職被保険者制度への加入以外には

任意継続被保険者になることしか選択の余地がありません。


一度任意継続被保険者になると2年間の猶予が与えられることから、

その間に見込みの収入額を判断し、

どちらにするかを選択するのが良いでしょう。

退職金などを考慮しても余裕のある生活を生涯続けられる人は限られています。
月々では小さな額ですが、十分に考えて決断しましょう。

健保組合の特例退職者医療制度について

健康保険組合は、厚生大臣の認可を得て、「特定健康保険組合」として退職者医療制度を運営しています。

加入できる資格要件

厚生年金の老齢(退職)年金/通算老齢(退職)年金の受給資格を有する人で、次のいずれかに該当している人です。

  • 健康保険組合の被保険者であった期間が20年以上ある人
  • 40歳になった月以降の当健康保険組合の被保険者であった期間が10年以上ある人

※任意継続被保険者の期間は含まれません。

健康保険料

健康保険料は、特例退職者の標準報酬月額に保険料率を乗じた額となります。

令和3年度4月分より(毎月払3/27引落より) : 410,000円 × 71.5/1000=29,315円(月額)

令和3年度 特例退職被保険者、任意継続被保険者の標準報酬月額について(公告第549号)

  • 64歳までは介護保険料(令和3年4月分より月額6,970円)も負担します。
  • 保険料率、標準報酬月額は毎年見直され、変更された場合には保険料も変わりますのでご留意ください。
  • 上記健康保険料は全額を本人が負担することになり納付義務者は本人になります。
  • 毎月の健康保険料は前納の場合を除き、預金口座振込制度(自動支払い)をご利用ください。自動支払い以外は毎月10日までに納付していただきます。健康保険料を前納することもできます(この場合は、割引の適用があります)。

保険給付/付加給付

一般被保険者と同種の保険給付・付加給付が受けられます(ただし、傷病手当金の支給はありません)。

  • 被保険者(本人)の医療費の一部負担金は3割です(7割給付)。
  • 被扶養者(家族)の医療費の一部負担金は3割です(7割給付)。
  • 付加給付は、自己負担した額が、被保険者の自己負担が25,000円(被扶養者は50,000円)を超えた場合、 超えた額が付加金として戻ります。(100円未満切り捨て)

保健事業

一般被保険者と同様に、利用することができます。 

資格がなくなるとき

  • 他の会社に勤めたとき。(勤務先の健康保険が優先されます)
  • 後期高齢者医療制度の対象となったとき。(75歳になったとき、または65歳以上で寝たきりなどになって市町村の障害認定を受けたとき)
  • 海外居住するとき。(日本国内での住民票を抹消したとき)
  • 死亡したとき。
  • 生活保護受給者となったとき。

なお、いったん健康保険組合の退職者医療に加入されますと、

その後は上記の事由以外では脱退することはできませんのでご注意ください。

 
 
 
 
3. 国民健康保険と、特例退職者医療制度とではどちらが有利ですか?

法定給付は同一ですが、

国民健康保険では、窓口での一部負担に対する付加金がありません。

特例退職者医療制度では、被保険者の自己負担が25,000円(被扶養者は50,000円)を超えた場合、超えた額(100円未満切り捨て)が付加金として戻ってきます。

保険料は、健保は定額ですが、

国保の場合は、市区町村により、また個々人の所得により異なりますので、保険料に関してはどちらが有利かは一概にいえません

 

参考

【特例退職被保険者】

標準報酬月額 410,000円
健康保険料 29,315円
介護保険料 6,970円
合計 36,285円

【任意継続被保険者】

標準報酬月額 530,000円(上限額)
健康保険料 37,895円
介護保険料 9,010円
合計 46,905円

*65歳以上の方の介護保険料は、健保組合では徴収しておりません。
*40歳未満の方は介護保険の徴収はありません。